
逆流性食道炎について詳しくまとめました。
この病気は一昔前までは、日本人には少なく、その中でもお年寄りに表れる症状でしたが、現代では食生活が欧米化していることやストレスなどで、若い人でも発症するようになっています。
自分にも当てはまらないか、是非参考にしてください。
逆流性食道炎の仕組み
逆流性食道炎の症状や原因を見る前に、体の中の仕組みを見ておきましょう。
逆流性食道炎は以下の3つの機能の働きが低下することで起きます。
下部食道括約筋
下部食道括約筋は、食道と胃袋のつなぎ目のところにある噴門の筋肉の部分になります。その役割は、食べた物を食道から胃袋へ運ぶ際には広がりますが、それ以外の時は逆流しないように縮んでいる状態になっています。
食道のぜん動運動
下部食道括約筋よりも上に位置している食道の働きのことを呼びます。本来の働きは、食べた物を排泄まで導く運動をしています。健康な状態であれば、食道まで戻ってきた食べ物も胃袋へ押し戻すようになっています。
唾液の飲み込み
胃液が胃袋から食道に戻ってきた場合も、唾液を飲み込むことで胃液を薄めて逆流を阻止しようとします。
※胃袋で食べ物を消化しようとする胃液は強力な刺激があり、粘膜で覆われている胃袋とは違い、食道は胃液に対する抵抗力が強くありません。そのため、上記3つの機能がうまく働かなかった場合に、胃液に逆らえず逆流性食道炎を発症することになります。
逆流性食道炎の症状
逆流性食道炎主な症状について見ていきます。
症状が悪化する前に病院へ行くなど治療するようにしましょう。
胸焼け
三大症状の一つであり、その名の通り胸が焼けるように熱くなります。胃酸が食道に戻るので、器官に刺激を与えて胸焼けを起こすことになります。前項の通り、食道は胃酸の刺激に弱いため胃酸が上がってくることで胸の辺りに不快感を覚えるわけですね。
喉の違和感(咳など)
胃酸が逆流していくことで食道の隣にある気管に入り、喉が炎症することになります。咳が出るのは、気管の入り口となる『喉頭(こうとう)』に胃酸が触れることになり、刺激に耐えられなくなり咳込むわけですね。
呑酸(どんさん)
三大症状の一つであり、胃酸が喉まで上がってきて苦かったり酸っぱい液体が口の中に広がります。ひどい時には嘔吐にまで発展します。呼吸をしても喉に残った苦味や酸っぱさが感じて、不快になります。
げっぷ
げっぷはご存じの通り体内に空気が入り込むので出るわけですが、逆流性食道炎の場合は胃腸の機能が低下していることにより体が必然的に空気を口から排出するように働くわけですね。
胸痛
胸が締めつけられるように痛むこと。心臓部の細胞に送る血管が、動脈硬化により血行の循環が悪くなる『狭心症』に似た症状ですので、注意が必要です。
嚥下(えんげ)障害
三大症状の一つで、喉が詰まって食べ物が呑み込めない症状のことを言います。胃酸が逆流しているので、唾液などを飲み込んでも痛かったり違和感を覚えます。
お腹が張る
便秘や消化不良によりお腹が張った状態が続くと、胃は腸から圧迫されて逆流することになります。老若男女問わずなる症状と言えます。
逆流性食道炎のメカニズムはこちらの動画をご覧ください。
逆流性食道炎になる原因
代表的な症状を見たところで、その原因について見ていきます。
以下のことを気をつけておくだけで予防になりますね。
脂肪分の摂り過ぎ
脂肪分の摂り過ぎは、十二指腸から分泌されているコレシストキニンというホルモンや胃を拡張させること、胃酸が必要以上に増えてしまうことで、下部食道括約筋をゆるめてしまいます。
肥満
肥満の人は食道裂孔ヘルニアになりやすい傾向にあります。食道裂孔ヘルニアとは下部食道括約筋の下にある横隔膜がゆるむことで逆流します。
猫背
普段からの猫背だけでなく、食後なども前かがみになることでお腹が圧迫されるので、逆流しやすくなります。
便秘
当然ではありますが、便秘により腸から胃へ押し戻されるイメージですね。常に便秘になっている1割の人が逆流性食道炎を発症しています。
たんぱく質の摂り過ぎ
たんぱく質自体が消化するまでに時間がかかるため、胃で消化されないまま逆流を起こしてしまいます。
加齢
高齢者に多い要因として、上記3つの働き(下部食道括約筋・ぜん動運動・唾液の飲み込み)が弱いところが挙げられます。
ストレス
ストレスにより下部食道括約筋の機能が低下することと、胃酸の分泌が活発になることで逆流します。
ストレスによる胃酸分泌を感じたら胃腸炎の可能性もあるので、その際はこちらの記事も参考にしてください
胃腸炎はストレスが原因~腹痛の治し方に効果的なストレス解消法~
睡眠不足
睡眠が不足すると体調も万全ではないため、いつもの生活リズムとは狂って便秘になります。便秘になると腸から胃へ、胃から食道へ押し戻されます。
喫煙、飲酒
タバコは胃酸の分泌が増え過ぎて、お酒(特にビールなどの炭酸系)は、げっぷにより胃から食道へと戻る傾向にあります。
カフェイン
コーヒーやお茶などカフェインの多い飲み物は胃酸の分泌を活発にするので、上の食道へ押し出されるわけですね。
食事や生活習慣の改善
これまでの生活の蓄積から発症しているため、食事や生活習慣を見直して体系など様々なものを改善することが身近で最も効果的な治療と言えます。
食事療法
オススメの食べ物や避ける食べ物などは、こちらの記事を参考にしてください。
胃腸を通る食べ物なので、同様の食事内容を載せています。
胃腸炎の症状は食事で改善する〜急性胃腸炎の原因と食べ物について〜
食事の際に気を付けることは、早食いや食べ過ぎは当然のことながら食べた直後に横にならないことです。
夕食時は、逆流しやすい方は食べる量を減らしたり、あっさりとした物を食べると良いでしょう。また、食べて最低でも1~2時間は寝ないようにしてください。
生活習慣の改善
生活習慣に関しては、基本的に原因となる逆のことができていれば良いです。
姿勢
猫背にならないように意識が必要ですね(特に食後は油断禁物)。
圧迫しない服装
ベルトや衣類で締め付けないように余裕のある服装を心掛けましょう。
睡眠時
横になる時は右向きになり、枕はできるだけ高い方が望ましいです。
ランニングやウォーキングなど
運動をして汗をかくことは、胃酸の分泌を減らして、ぜん動運動を活発にします(筋トレで済まさないこと)。
お腹に力を入れない
腹筋や排便時、重たい物を持ち上げるなど、お腹に力が入る行為は避けましょう。
その他
ストレスを溜めない、睡眠時間を十分に摂り、便秘解消に努めるなど
薬物療法などの治療
現在使われている薬では完治させる物はないため、再発防止に向けて継続して飲み続けなければならない点では、食事療法や生活習慣の改善に比べれば負担があるかもしれません。
ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)
ヒスタミンという物質の結合を抑え、胃酸の分泌を抑えてくれます
(副作用の可能性:便秘、下痢、発疹など)
プロトンポンプ阻害薬(PPI)
こちらも胃酸の分泌を抑えますが、H2ブロッカーよりも強力な薬です。
(副作用の可能性:発疹、肝障害など)
粘膜保護薬
食道の粘膜をカバーして、胃液からの刺激に対して食道を守ってくれます。
(副作用の可能性:便秘、下痢など)
制酸剤
胃酸の中和剤。胃酸を中和することで炎症を抑えるので、胸やけなどに効果的です。
(副作用の可能性:便秘、下痢など)
消化管運動機能改善剤
その名の通り、下部食道括約筋やぜん動運動の機能を活発にして逆流する量を減らしてくれます。
※手術による治療
食事・生活習慣の改善や薬の服用で回復が見られない(食道裂孔ヘルニア)場合は、逆流を防止する機能の修復のために、噴門形成術という手術が必要になってきます。
この手術は、緩んでしまった食道を縫って縮ませ、胸部にある胃を元の位置に戻して、胃で食道を巻き付けるといった施術を施します。
胃腸やお腹など消化器官が気になる方はこちらの記事を参考にしてください。
▼NEW!!
逆流性胃腸炎についての記事を新しく書きましたので、一緒にご覧ください。
逆流性胃腸炎の症状と対策をチェック〜吐き気がある時の食事療法〜
逆流性胃腸炎の治し方について〜効果的な漢方薬・ツボ・運動療法とは〜
▼NEXT
【消化器官の記事ランキング10】
1位 胃腸炎の食事療法について
2位 食後の腹痛の治し方について
3位 胃腸炎とストレスについて
4位 胃潰瘍の症状と原因・食事療法
5位 逆流性食道炎の症状と治療法 ←今ココ
6位 胃腸炎とウイルスについて
7位 十二指腸潰瘍の症状・原因・治療について
8位 ピロリ菌の症状と感染・除菌について
9位 胃もたれの症状と原因・解消法について
10位 胃の場所と右と左の痛みについて
まとめ
逆流性食道炎の症状や原因と治療法について見てきました。
まとめると以下の通りになります。
・下部食道括約筋・ぜん動運動・唾液の飲み込みの基本的な働きを知る
・逆流性食道炎の症状の胸焼けや呑酸は、加齢だけでなく生活習慣から由来している
・治療の基本的は生活習慣の改善であるが、改善が見られない場合は薬物療法や手術を施す
この記事へのコメントはありません。