
十二指腸潰瘍の症状・原因・治療について詳しくまとめました。
以前に胃潰瘍に関する記事を書きましたが、十二指腸潰瘍は微妙に違うようです。また、胃潰瘍の記事ではお伝えしていなかった治療についても詳しくまとめたので、是非参考にしてください。
なお、胃潰瘍の記事はこちらからご覧ください。
目次
十二指腸潰瘍の症状
最初に、十二指腸潰瘍の症状について見ていきます。
十二指腸潰瘍とは
まず、十二指腸とはどこにある臓器なのか、ご存知でしょうか?
十二指腸とは小腸の一部で、胃から下る最初(入口)の腸の部分です。十二指腸潰瘍は胃とその十二指腸とをつなげる幽門から出たところ(十二指腸に入ってすぐのところ)にできやすいと言われています。
また、十二指腸潰瘍は胃潰瘍と合わせて消化性潰瘍とも言われます。
では、潰瘍はどのようにできるのかについても触れておきます。
胃潰瘍は胃液によって胃の粘膜を傷つけて起こりますが、十二指腸潰瘍も次の消化器官に位置するため、その胃液の影響を受けます。
胃には大きく分けると、胃底腺領域と幽門腺領域という2種類の箇所があります。胃底腺領域で潰瘍ができることはほとんどなく、幽門腺領域の方に潰瘍ができます。その詳しい理由はわかっていませんが、抵抗力の強弱という説があります。抵抗力の弱い幽門腺では、潰瘍の原因ともされているピロリ菌がよく発見されています。
そして、加齢によって潰瘍が発見される箇所も、十二指腸から胃へと上がっていきます。
その理由として、若い頃は抵抗力の強い胃底腺領域が広く胃酸の分泌が活発ということで十二指腸潰瘍になり、中高年になると胃底腺領域が狭くなり、抵抗力の弱い幽門腺領域が広がることで胃潰瘍になります。
胃・十二指腸潰瘍についての動画は、こちらをご覧ください。
症状
症状は胃潰瘍と似ていますが、微妙に違うところもあります。
みぞおち辺りの痛み
一番多い初期症状と言えます。胃潰瘍も同じ箇所が痛みますが、違いについては食べた後に痛い場合が胃潰瘍で、空腹時に痛むのが十二指腸潰瘍と判断できます。
背中の痛み
十二指腸が胃よりも背面に位置しているので、背中が痛みます。痛みの位置は胃が左側だけであるのに対して、十二指腸は左右関係なく腰の辺りにも起きます。
胸やけ、げっぷ
胃酸分泌が多くなることで、胃から食道にかけて戻される症状です。逆流性食道炎にも似た症状なので気をつけてください。
逆流性食道炎については、こちらの記事を参考にしてください。
逆流性食道炎の症状と原因について〜効果的な食事や薬による治療〜
吐き気
胸やけやげっぷから発展した症状と言えます。胃酸の過剰分泌により、胃液と一緒に食べた物を吐き出すこともあります。
食欲不振
吐き気などがあると同時に食欲不振にもなります。消化不良になるので、食欲も湧きません。胃腸に優しい食事は不可欠になります。
お腹の張り
これは逆に胃酸の分泌が低下することで起きます。腸の働きも鈍くなるので、ガスが溜まったり便秘になることもあります。
吐血、血便
吐血の多くは胃や十二指腸からの原因が多く、胃酸により黒くなっているのが特徴的です。これは進行した症状なので早急に受診してください。
下痢
下痢の原因は色々ありますが、胃酸が過剰に分泌され普段以上に濃度が濃くなっているので、消化され過ぎてしまうことで下痢にもなります。
十二指腸潰瘍の原因
次に十二指腸潰瘍の原因について見ていきます。
こちらは胃潰瘍を発症する原因と全く同じになりますので、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
胃潰瘍の症状と原因について〜症状チェックと食事療法のポイント〜
十二指腸潰瘍の治療
十二指腸潰瘍の治療は、胃潰瘍の治療にもなりますので、しっかりご確認ください。
ピロリ菌の除菌
胃潰瘍や十二指腸潰瘍になる原因で、最も高いのがピロリ菌感染と言われています。その証拠に、胃・十二指腸潰瘍の70%以上の患者がピロリ菌に感染しています。そのため、感染している人はピロリ菌の除菌を済ませてから、治療に入ります。これを済ませなければ、再発する可能性が高いので必須と言えます。
中和薬の服用
ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)
簡単に言えば、胃酸分泌を抑制してくれる薬です。ヒスタミンは胃酸分泌させる最も強力な物質で、その受け皿であるH2受容体と結合することで胃酸が分泌されます。その結合を防いでくれる働きをしてくれます。
副作用の可能性:便秘、下痢、発疹、食欲不振、口の渇きなど
プロトンポンプ阻害薬(PPI)
これも胃酸分泌を抑制してくれる薬ですが、H2ブロッカーよりも強力です。その理由として、胃酸は色々な要素が合わさって分泌されるわけですが、その最終的に胃酸が分泌されるところ(プロトンポンプ)で食い止めてくれます。服用期間は、胃潰瘍で8週間・十二指腸潰瘍で6週間と決められています。
副作用の可能性:発疹、肝障害など
抗コリン薬
ヒスタミンH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬よりも胃酸分泌の抑制効果は低いです。胃酸分泌させるホルモンのガストリンの働きを抑制したり、胃酸分泌を促すアセチルコリンの働きを遮断してくれます。
副作用の可能性:動悸、排尿障害、発疹など
制酸剤
胸やけなどには効果的な胃酸の中和薬です。この薬の長所は即効性があるところですが、短所は効き目が短時間というところです。
副作用の可能性:便秘、下痢など
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の中止または粘膜保護薬(プロスタグランジン製剤)
鎮痛剤や解熱剤として処方されている非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)ですが、これは服用することを止めれば胃酸分泌は抑制できます。また、胃の粘膜を保護したり粘液を分泌させる効果のある粘膜保護薬(プロスタグランジン製剤)はNSAIDsに対して有効とされています。
副作用の可能性(粘膜保護薬):腹痛、下痢など
※粘膜保護薬(プロスタグランジン製剤)は子宮収縮作用もあるので、妊婦は服用を禁止されています。
ストレスの解消
胃潰瘍や十二指腸潰瘍はストレスが発症する原因とも言われています。ストレスと言っても身体的なストレスと精神的なストレスがありますが、それを一言で表すと『自律神経の乱れ』ということになります。この自律神経には交感神経と副交感神経があって、そのバランスが崩れるとストレスが溜まり胃酸分泌されるようになります。
ストレスや自律神経については、こちらの記事に詳しく書いています。
胃腸炎はストレスが原因~腹痛の治し方に効果的なストレス解消法~
自律神経失調症の症状とは〜女性の自律神経の乱れを無料でチェック〜
空腹時の胃痛の治し方
ここでは、空腹時の胃痛の治し方なので、即効性のあることから普段の生活習慣の改善について見ていきます。
すぐにできること
足踏み、ダッシュ
早い足踏みやダッシュは一時的に空腹感を抑えられます。アドレナリンが分泌されるので、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンという物質が分解され蓄えられた糖質で血液中に送られます。
飲む、食べる
まずは空腹時から早く解放されることが重要ですが、ここでの注意点としてはドカ食いや胃に負担のある物は避けましょう。飲み物や食べ物は以下のものを参考にしてください。
食べ物、飲み物
水分補給
水分補給は忙しい時など食べる時間や余裕がない人には最適ですが、この中でも胃の粘膜を保護する『牛乳』は一番オススメです。
水、野菜ジュース、牛乳、豆乳、炭酸飲料、コーヒー、お茶(ノンカフェイン)など
野菜
ビタミンA・Cが含まれている緑黄色野菜やビタミンCが含まれている淡色野菜は、胃の粘膜を修復・保護の効果があります(ビタミンAは炎症や潰瘍も改善)。
にんじん、ほうれん草、かぼちゃ、トマト、大根、キャベツ、ブロッコリーなど
サプリメントでもビタミン補給ができますね。
食べ方
スローフード
早食いは一緒に多くの酸素も飲み込むことになるので、胃痛を起こしやすくなります。また、ゆっくり噛まないで食べることは消化不良の原因になります。
満腹にならない
一回で食べる量が多いと、胃が膨らみ収縮機能も低下します。腹八分目とは言いますが、七分目もしくは六分目程度にすると良いでしょう。その代わり、間食を増やしましょう。
習慣の改善
1日3食を守る
空腹時から早く解放させるのと同様に、空腹の時間を減らすことが重要になります。空腹が長くなるほど胃酸だけが分泌され、胃が荒れることになります。毎日時間を決めて3食を守りましょう。
ストレスを溜めない
治療の項目でもご説明しましたが、ストレスは胃の働きを大きく関わってきます。ストレスがきっかけで胃酸が出過ぎないように、日頃から小まめに発散するようにしましょう。
胃薬
スクラート
この薬の成分であるスクラルファートが胃酸で傷ついた部分を正常な状態に修復してくれます。効果は6時間以上もあるので、寝る前に飲めばぐっすり眠れます。
サクロン
この薬は胃酸で荒れた胃粘膜の修復や保護をして胃酸分泌を抑えてくれるので、食間(空腹時)に飲む薬です。効果は10分程度で表れ、3~4時間は持続します。
▼おすすめ
胃腸炎の食事には消化にいい食べ物を選ぶ〜うどんが良い3つの理由〜
胃腸やお腹など消化器官が気になる方はこちらの記事を参考にしてください。
▼NEXT
【消化器官の記事ランキング10】
1位 胃腸炎の食事療法について
2位 食後の腹痛の治し方について
3位 胃腸炎とストレスについて
4位 胃潰瘍の症状と原因・食事療法
5位 逆流性食道炎の症状と治療法
6位 胃腸炎とウイルスについて
7位 十二指腸潰瘍の症状・原因・治療について ←今ココ
8位 ピロリ菌の症状と感染・除菌について
9位 胃もたれの症状と原因・解消法について
10位 胃の場所と右と左の痛みについて
まとめ
十二指腸潰瘍の症状・原因・治療について見てきました。
まとめると以下の通りになります。
・十二指腸潰瘍は若い人の発症率が高く、症状も空腹時に痛むなどと胃潰瘍とは微妙に異なる
・十二指腸潰瘍はピロリ菌やNSAIDsやストレスが原因なので、これらを治療することが近道になる
・空腹時の胃痛の治し方は、すぐできることから普段からの食べ物や食べ方などの改善方法がある
この記事へのコメントはありません。