
日本語には実にたくさんの、いや数えられないほど無数の言語表現がありますよね!
私たちの日常に根差したものも多く例えとして用いられますが、特に「食べ物」「植物」「季節」なんかは多く目にします。今回ご紹介したいのは、「火中の栗を拾う」という言葉。
何となくイメージはできるものの、いざ自分が使うとなるとちょっとハードルが高いことわざです。
いったいどんな意味があるのでしょうか。
目次
火中の栗を拾うの意味と由来とは
ではまず、火中の栗を拾うとはどんな言葉なのでしょうか。
「火中の栗を拾う」の読み方
「火中の栗を拾う」は、「かちゅうのくりをひろう」と読みます。
「火中」を「ひちゅう」と間違って読まないように注意しましょう。
「火中の栗を拾う」の意味
自分には全く利益のないものごとなのに、そそのかされて危険を冒すこと
またそれによってひどい目にあうこと
皆さんにもこのような経験はありますか?
実はこの「火中の栗を拾う」と関連した国際情勢の風刺画(ふうしが)があるほど有名な言葉なんです!
登場人物(国)は、ロシア・イギリス・アメリカそして日本。
ここでロシアが火の中で栗を焼いている(まさに火中の栗、ですね)のですが、その栗を奪いたいイギリスが日本をそそのかしてその栗をとってこさせようとしています。アメリカはおこぼれちょうだいを狙って一歩下がって事の顛末(てんまつ)を見守っている。
このような風刺画が、アジア極東地域(満州や朝鮮半島)の利権を巡った各国の思惑を表現するものとして、一躍有名になりました。どうやら直接的に各国の力関係を表現しているわけではなく、世相を正確に表しているというよりは皮肉に描かれているものだそうです。
この風刺画の中でもし日本がこの栗を拾っていたら、「イギリスのために日本が危険を犯す」という、まさに火中の栗を拾うということになったでしょうね。
ことわざの由来
では、火中の栗を拾うという言葉は何から生まれたものなのでしょうか。
「火中の栗を拾う」と関係が物語とは?
火中の栗を拾うということわざは、元々日本に由来のあるものではなくフランスの「イソップ物語」が元になっている言葉なのです!
17世紀 に活躍した詩人、ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ。
彼はイソップ物語を基に寓話(教訓的なことを物語を通して伝えるもの)集を残しているのですが、その中の1つに「火中の栗を拾う」と関連しているお話、「猿と猫」があります。
「猿と猫」のあらすじ
この猿と猫は、とある主人に飼われていて名前を「ベルトラン(猿)」と「ラトン(猫)」といいます。
ある日この2匹は、暖炉のそばで栗が焼けるのを見守っていました。その時、猿が猫をおだてて火の中の栗をとらせようとそそのかします。すっかりその気になった猫は巧みに構えて栗を2個、3個と取り出していくのです。
取った栗を二人で食べるつもりで頑張っていた猫ですが、猫が栗をとるや否やパクパクと栗を食べてしまう猿。
結局猫は手にやけどを負ったにもかかわらず猿に栗を食べられ、踏んだり蹴ったりな目に遭ってしまったのです。…なんとも不憫な猫。
これが「火中の栗を拾う」の由来となったお話、というわけです。
私たちの暖炉のイメージって、こういう動画ではないですか?この動画の猫はそそのかされて栗を拾わされることなくゆったり過ごしているようで、見ているこちらまでホッコリしてきますよね!
とはいえ、この中で栗が焼けていても拾おうとは思いませんが…(笑)
猫と暖炉
同じ意味を持つことわざ
このように猿と猫が登場することわざですが、同じ意味を持つことわざでは以下のようなものがあります。
・虎穴に入る
・火中に飛び込む
・危険な橋を渡る
一緒に覚えておきましょう!
火中の栗を拾うの使い方と例文
このようにしてできた「火中の栗を拾う」ということわざですが、次は実践編を見ていきたいと思います。
このことわざに関して、一番多く見受けられるのが比喩的に用いるパターンです。
以下のような例文を参考にしてみてください!
ビジネスの場面で
「火中の栗を拾いたくなければ、あの会社の社長とはつながっておくべきだよ。」
そそのかされて自分(もしくは自分の会社)に利益があるかどうかわからない物事を任せられる前に、よい人脈を作っておいた方がいい、という意味合いで用いる場合はこのような言い回しを使う事もありますね!
アドバイスに
「短気なあの二人のけんかを止めるなんて、火中の栗を拾うようなものだからやめておいた方がいい。」
ただでさえけんかの仲裁は大変なのに、お互いが短気な者同士のけんかの場合はより仲裁する人にも飛び火する可能性があるから、引き受けない方がいいという表現です。
誉め言葉ではない
「火中の栗を拾うと分かっていて引き受けるなんてなんてお人よしなんだ!」
自分に利益がないばかりか相手に利益を持っていかれてしまうと分かっていながら何かを引き受けてしまったパターンがこれにあれはまるでしょう。自分に何も良いことがないのに引き受けるとは、お人よしですね!
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ことわざも知れば知るほど身近になる!
最初は「実際自分が使うのはハードルが高いな」というイメージが強かったかもしれませんが、実際に意味を知っていくと、このことわざを身近に感じられるようになってきませんでしたか?
なんかうまくいかないことがあると「現代って世知辛い世の中だ!」なんて思っていましたが、「火中の栗を拾う」という言葉みたいな不条理は昔からあったんですね!
もし仕事やプライベートで自分に何も良いことがない物事を任せられそうになったら、その時には是非「私、火中の栗はひろいたくありません!」と切り返してみましょう。
少し自分自身がレベルアップしたように感じられるかもしれないですね!
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