
漢字には「同音異義語」がたくさんあります。国語のテストで毎回のように出題される
この同音異義語、学生時代には丸暗記で覚えてはみたものの、いざ使うとなると間違っている表現もことも多々あったりで、社会人として恥ずかしい経験をしたこともありませんか?
似たような言葉なのに『何で漢字を変えるの?』と思ったこともあったり、しかしその漢字全てに意味があることを知ると奥深いものだと改めて感じます。
そこで、ここでは社会人になってよく耳にする「遵守」と「順守」という、二つの言葉についての違いと使い方を見ていきたいと思います。
「遵守」と「順守」の違い
色々なところで目や耳にする「じゅんしゅ」という言葉、聞くだけだとどっちの漢字を使っているのかよく分からないことがありませんか?どちらの言葉も「決まり事や規則・法律・道徳などを守ることなんだろうなあ」と、私自身も漠然と思っています。
実際「遵」と「順」、この「じゅん」と読む二つの漢字ですが、どちらも常用漢字で実際「法令遵守」と「法令順守」どちらも目にする熟語ですね。
簡単にまとめてしまうと、この二つの漢字は意味としては同じものなんです。
では、どうして一つにまとめないのか?
それは元々「遵守」が使用されていたのですが、昭和29年3月国語審議会によって「当用漢字審議報告」というものがまとめられ、特定の漢字28文字が将来と変わることのない漢字として挙げられたのです。その中には「遵」も含まれていますが、この報告はあくまで“使ってはいけない漢字”を決めるものではなく、今後の参考までに漢字を増減する参考資料として作られたものなんです。
あいまいな感じがしますが昭和35年にはそれらの漢字は削らず「現状維持もよし」「新候補は加えてよし」ということになり、昭和56年に「常用漢字表」が誕生しました。その中に「遵」も加えられ、結果的には変わることなく使用出来ることになりました。
余談ではありますが、このような漢字は「濫用」と「乱用」、「箇所」と「個所」などがありますが、現在でもどちらも目にする漢字ですね。
「遵守」と「順守」の使い方と例文
次に、「遵守」と「順守」の使い分け方についての説明と、例文を見ながら使い方を理解していきましょう。
「遵守」と「順守」の使い分け方
では、「遵守」と「順守」という、この二つの言葉をどう使い分けているのでしょうか。
そもそも意味自体は同じで、常用漢字にもあるのでどちらを使っても間違いはないわけです。
しかし、現在では「順守」の方が目にすることが多いと思います。それはなぜかと言うと、前述した「当用漢字審議報告」がまとまられた際に各方面の反応が影響しているからなんです。
その背景には、
・文芸や教育の世界ではこの案に反対
・新聞やメディアの世界では試しに使ってみようと施行された翌年から使用を開始
この二分した考えが今に至っていると言えます。
では、『どちらを使っても大丈夫?』という声が聞こえてきますが。。
そうなんです!本来の意味に違いはないから、個人的な文章に使うにはどちらの漢字を使ってもいいのです。
ただし新聞業界やメディアでは「順守」を使用することとされ、役場などに提出する書類などは「遵守」と記載されますが、こちらは「順守」でも間違いではありません。現在では「順守」の方が一般化されているので、こちらを使うことで間違いはないと言えます。
今では『「遵守」も使いたいなあ』と思っても、なかなか個人的なお手紙や文章で使う機会がない上に、新聞などで目にする「順守」が当たり前になっているので、「遵」は昔の漢字のように捉えられているのかもしれませんね。
「遵守」と「順守」を使った例文
「遵守」
・師の教えを遵守すること
・我が国は加盟国として国際法を遵守しなければならない
・戒律とは、修行僧が遵守すべき規則のことである
「順守」
・私たちは規則に順守しているか再度確認が必要である
・交通ルールを順守しましょう
・納期を順守していただきありがとうございました
このようにどちらの漢字を用いても意味は同じですが、「順」を用いた方は私たちに身近なように思いますね。「遵」は敬いの意味も込められているのです。
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「遵守」と「順守」を使い分けよう
ここまで「遵守」と「順守」を見てきましたが、いかがでしたでしょうか?
結果、現在の主としてはメディア業界で当たり前になっている「順守」が使用されていますが、元々は「遵守」のみが使用され、これらの文字が当用漢字から外されかねない事態となっていたんですね。
そして、その代わりとして「順守」が登場、この案に対して「遵守」を使いたいという思いがこの表記を残してきたことがわかりました。
この二つの文字には漢字が辿ってきた歴史の現れだと感じると同時に、言葉の深さを知り『なるほど』と思うと漢字も楽しくなりますね。
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