
社会に出てみると、それまでに出会ったことのない言葉の表現に出くわすことが時々ありますよね。
その中でも、敬語表現については相手先に失礼のないよう、正しい知識をしっかり身に着けておきたいものです。私は一度謙譲語(自分をへりくだってする表現)を相手方に使ってしまったことがあり、あわてて訂正したことがあります。いかに知識を備えていることが大事かという事を痛感したものです。
この記事では、尊敬の意味を含むビジネス用語である「ご足労をおかけしますが」の意味や使い方の例文や「ご足労いただき」との違いについて、ご紹介します。
目次
「ご足労」の意味と使い方
社会人になって初めて目にしたことがあるという方も多いであろうこの「ご足労(そくろう)をおかけしますが」という言葉ですが、まずはその意味やルーツを紐解いていくことにしましょう。
「ご足労をおかけしますが」の意味
「ご足労をおかけしますが」という言葉には、「相手にわざわざ足を運んでもらうことに対するねぎらい」の意味が含まれています。
「(本来だったらこちらが先方に出向かなければならないところなのに)お越し頂いてすみません」という意味です。
「ご足労をおかけしますが」という言葉が生まれたきっかけは「わざわざ来てもらう」という部分にありますが、ビジネス用語として使う場合、ただ「来てもらう」「来訪してもらう」という意味だけではなく、会議や打ち合わせなどに「参加してもらう」「同席してもらう」というような場合も使うことができます。
少しルーツから派生した表現も使いこなせるようになれば、社会人としてステップアップできますね。
「ご足労をおかけしますが」を使える相手
「わざわざ来て頂きすみません」というへりくだった意味がある「ご足労をおかけしますが」という言葉なので、社長や上司をはじめとする社内の目上の人や、取引先の会社の方に使える尊敬語として覚えておきましょう。
この場合は、たとえ目上の人であっても、社内の人間に尊敬語を使うのは取引先よりも社内の上司を持ち上げることを大事にしているという印象を与えかねません。よって、この場合の尊敬語は取引先に対してのみにし、社内の人物に対しては使わないようにしましょう。
「ご足労をおかけしますが」の例文
それでは実際に、「ご足労をおかけしますが」というフレーズの使い方をご紹介していきます。
- 「ご足労をおかけしますが、何卒よろしくお願い致します。」
- 「ご足労をおかけしますが、ご来訪をお待ち致しております。」
- 「社長、ご足労をおかけしますがなにとぞ会議への参加をお願い致します。」
- 「明日はご足労をおかけしますが、15:00に弊社会議室でお待ちしております。」
- 「来月の全体集会へは、ご足労をおかけしますが何卒ご参加の程お願い致します。」
この例文のポイントは、「未来に起きうる出来事」の話をしているときに「ご足労をおかけしますが」という言葉が使われているという点です。
「ご足労をおかけしますが」という言葉は、過去や現在に起きた(起きている)出来事ではなく、未来の出来事に対して使える表現なんですね。
では過去や現在ではどのような言い回しがあるのでしょうか。
「ご足労いただき」との違い
「ご足労をおかけしますが」は、予定された未来の話をする時に使う言葉です。
これから来てもらう場合に使うにはもってこいの表現です。
「ご足労いただき」の使い方
では、現在や過去ではどのように表現するかというと「ご足労いただき」という表現が活躍します。
例えば取引先の方があなたの会社に来られた場合、下記のような言い回しが便利です。
「この度はご足労いただき、ありがとうございます。」
「先日の打ち合わせではわざわざ弊社にご足労頂き、御礼申し上げます」
のように、「わざわざ来て下さってありがとうございます」という感謝の意味や御礼の意味を伝えたいときに使いましょう。
「ご足労をおかけし」と「ご足労いただき」のニュアンスの違い
一見、「ご足労」に目がいってしまって、どちらも大きな違いがないように見える「ご足労をおかけし」と「ご足労いただき」の2つですが、実は明確な違いがあります。
「ご足労をおかけし」の中で使われている「おかけし」という言葉は、「ご迷惑をおかけし」「ご面倒をおかけし」のように、「相手に負担をかけてしまって申し訳ない、恐縮である」という意味を持っています。
それに対して「ご足労いただき」という言葉は、感謝やお礼の気持ちを表す表現です。
この微妙なニュアンスの違いが「ご足労をおかけし」と「ご足労いただき」の違いという事になります。
少しの違いがビジネススキルの大きな差に
微妙なニュアンスの違いを正確に理解して使い分けるスキルこそ、ビジネスシーンでは必要不可欠な要素です。
この記事では、「ご足労をおかけし」と「ご足労いただき」の2つのニュアンスの違いから使える時制の違いまで網羅したので、少しずつ実践に取り入れてワンランク上のビジネス用語の使い方をマスターしていきましょう。
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