
目上の人と話す時、言葉選びには慎重になりますよね。
社会人においては、敬語を正しく使えることは必要不可欠なマナーですが、しかし一言一句完璧に使い分けができている人もそう多くはないでしょう。
私が耳にしたことのある大きな失敗は、目上の人に食べ物を勧める時に「どうぞ頂いてください」と言ってしまっているパターンです。特に尊敬語と謙譲語の使い分けは難しいですよね。
この記事では、尊敬語?丁寧語?これらの見分けが付きにくい「出来かねます」意味と使い方の例文、「致しかねる」との違いについてご紹介します。
目次
「出来かねる」の意味と「致しかねる」との違い
まず、出来かねるとはどういう意味なのでしょうか。出来るのかできないのか、曖昧でよくわからない…ということもありますよね。
まずは意味からご紹介していきます。
「出来かねる」の意味とは
「出来かねる」という言葉には「出来ない」「受けられない」という意味があります。
例えばランチに出かけて、「Aランチを頼んだけどやっぱりBランチにしてほしい」と頼まれたとしても、すでにAランチが完成していた後では受けられないこともありますよね。
こういった場合に「出来かねます」という言葉が有用です。
ところで、この言葉が敬語かそうでないか判断するには注意が必要です。
「出来かねる」という言葉は敬語ではありません。よって目上の人に「出来かねます」なんて使ってしまうととんでもない失礼に当たります。
少し言葉をかみ砕いていくととても分かりやすいので早速分解してみましょう。
~かねる
ここに戸惑う人も多いと思いますが、「~かねる」という表現は「~ない」という意味を少し柔らかく変えたものです。
「~ない」と直接的に否定の表現を使ってしまうと、角が立ってしまう場合があります。このように、うしろめたさや言いにくさを和らげる手段として「~しかねる」のように言葉上では否定のニュアンスを取り除いている、という手法です。しかし敬語か敬語でないかを区別した場合は「~ない」と同様、敬語ではありません。
ニュアンスが柔らかくなった分、目上の人に使ってもよさそうに見えてしまうので誤った使い方をしないように注意しましょう。
出来る
では、「出来る」という言葉はどうでしょうか。もちろんこの表現は敬語ではありませんよね。
このように、「出来る」「かねる」を分解してみていくと、どちらも敬語ではないということが分かります。敬語ではない者同士をくっつけたところで敬語にはならないので「出来かねる」は敬語ではない、というわけです。
では「出来かねる」を敬語にしたければどうすればよいのでしょうか。
その答えが「致しかねる」にするという事です。
目上の人に使う為に自分をへりくだって表現する敬語のことを「謙譲語(けんじょうご)」と言います。
相手をたてるという視点ではなく、自分を下にさげるという視点に変えて相手との立場の違いを明らかに表現する方法です。
「出来る」の謙譲語は「致す」です。よって「致しかねる」とすることによって、目上の人にも使うことができる謙譲語になるというわけなのです。
「出来かねる」の使い方と例文
「出来かねる」という言葉では、婉曲表現(後ろめたい事柄を別の言い回しによって見えにくくしている表現)を使っているので、実際にできるのかできないのか混乱してしまう人もいるのではないでしょうか。
ビジネス用語として使う際のポイントを、例文を踏まえながら抑えていきましょう。
「出来かねる」のビジネス上の使い方
たとえ相手が自分より若かったり社会人歴が浅かったりしても、ビジネス上の取引がある相手先には基本的に敬語を使って話すのが世のルールです。
よってビジネスで「出来かねます」と使ってしまうのは、敬語を使っていないのでNGだと言えます。「致しかねます」という言葉を使うようにしましょう。
ただし、いざ使うとなると意味が飛んでしまって「出来る」のか「出来ない」のか混乱してしまったということも起こりえますよね。その場合は別の言い換えの言葉を使いましょう。
例えば「お受けできません」とはっきり言ってしまうのもひとつの方法です。婉曲表現だと、ニュアンスは柔らかくなると同時に否定の意味も何となく柔らかくなってしまって、相手によっては正確に意図が伝わらないかもしれません。
自分のためにも相手のためにも、自信がない時には「致しかねます」婉曲表現をあえて使わず「お受けできません」としたほうが良いかもしれないですね。
「出来かねる」を謙譲語にした場合の例文5選
1.「弊社におきましては今回の貴社からのご依頼に同意致しかねます。」
2.「申し訳ございませんが、そのような事は致しかねます」
3.「せっかくお休みになられたので、これ以上の妨げは致しかねます」
4.「色々と試行錯誤を重ねましたが、今回は致しかねます」
5.「30日を過ぎての返品交換は致しかねます」
「致しかねます」という謙譲語の婉曲表現を使えば、かなりニュアンスも丸くなるのですが、それでもさらに感じよく相手と対話するには「申し訳ございませんが」という文言や「今回は」といったような、クッション言葉を一言添えると印象もぐっと良くなります。
シーンにあった言葉選びができるようになろう
日本語は本当に奥ゆかしく、言葉の選択によってイメージはいかようにも変わります。
同じ意味でも様々な表現があるので混乱しがちではあるので、自信がない時はまず翻意をきちんと伝えられる言葉を選ぶ方が先決ですが、慣れてくれば婉曲表現を駆使してよりよいビジネスライフを送れるようになりたいものですね。
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