
社会人になって経験を積むと仕事のスキルも上がっていき、正しい敬語を使えるのが当たり前になってくるものです。特にメールでの文言は後に残るものなので、私は言葉遣いについては日常生活では比べ物にならないくらい注意を払うことがあります。そのくらい言葉に敏感になるからこそ語彙も増える、し正しい敬語使いができるようになるのではないでしょうか。
この記事では、そんな言葉の中でも「苦言を呈する」という言葉の読み方や意味だけでなく、使い方のポイントや例文、類義語・英語表現についてご紹介していきます。
目次
「苦言を呈する」の意味
「苦言を呈する」って字面で「あんまり相手が気持ちよくないことを言う事だろうな」とは想像できますが、裏にはどういう意味が隠れているのでしょうか。
「苦言を呈する」の読み方
言葉を知るにはまず読み方ですよね。
「苦言を呈する」は「くげんをていする」と読みます。引っかかるとしたら「呈する」のところだと思いますが、他は音読みをきちんと知っていれば素直に読むだけで大丈夫です。
「苦言を呈する」の意味
「苦しい」という漢字が出てきているとどうしても良い印象を受けにくいですが、実際にどういう意味を含んだ言葉なのでしょうか。「苦言」と「呈する」という言葉に分解して正しく理解していきましょう。
「苦言」とは
「苦言」には、「苦い言葉」つまり言う側にとっても聞く側にとっても辛い、もしくは苦い思いを伴う言葉という意味があります。
ポイントは、両者にとって嫌な感情が伴う、ということ。しかしこの裏には、その話の元をより良いものにしたいとか、改善したい、という前向きなメッセージを含んでいるものであるという前提があります。
相手を嫌な気持ちにさせたくて言う言葉ではなくて、よりよきを求めるにあたり言わなければいけない言葉、と理解すると良いでしょう。
「呈する」とは
「呈する」という言葉には「贈る」「差し上げる」という意味があります。
「苦言」と組み合わせるとさらに嫌味な感じを助長しがちですが、「苦言」に含まれる本来の意味を把握していれば納得できますよね。
というわけで、「苦言を呈する」とは「言うも聞くも心苦しいけれど、よりよいものにするために必要な言葉や意見を伝える」という意味です。
相手の意見に背いたり、意を唱える場合に使う言葉なので使うには勇気がいるかもしれませんが、きちんと伝えるべきは伝えるようにした方が良いですね。
「苦言を呈する」の使い方
「苦言を呈する」という言葉は、ある程度形式的で堅い言葉に分類されるのでビジネス上で使うにはもってこいの言葉だといえます。
そこで、実際に「苦言を呈する」という言葉の使い方についてご紹介していきます。
ビジネス上ではどう使うべきか
相手の意見に反する意見を述べる時には、相手のことやタイミングを間違えるとちょっとした諍い(いさかい)が起きかねます。そういった場合に前置きとして便利なのが、「苦言を呈する」という言葉です。
本題に入る前に、かっちりした表現で前置きすることによって、相手も感情的にならず意見を受け入れやすくなりますよ。
もし面と向かって意見するのはまだ勇気がない、という場合はメールなどで文章にして伝えるようにしましょう。
直接ではなくメールという媒体を通して物事を伝えるので、相手も落ち着いて意見を吟味できるという利点があります。
上司や目上の人に対する使い方
「苦言を呈する」という言葉の意味は分かりましたが、そのままで上司や目上の人に対する言葉としてはふさわしいかというと、決して失礼にあたる言葉ではありません。しかし、部下に「苦言を呈する」と言われて気分を害する人がいるのも確かです。
そこで、「苦言を呈する」の代わりに上司に使える言葉として、以下のような表現があります。
- 進言(しんげん)する
- 諫言(かんげん)する
この2つはそれだけで「苦言を呈する」の言い換えとなるので、「苦言を進言(諫言)します」という言葉遣いは間違いです。「私から苦言を呈します」と伝えたいときに、「私が進言(諫言)致します」というように使うのが正しい使い方なので、目上の人にはこちらを使うと相手の心象も良く意見を述べることができます。
「苦言を呈する」を使った例文
1.「貴社の方針に一言、苦言を呈したく思います。」
2.「恐れ入りますが、当プロジェクトの進捗管理について苦言を呈します。」
3.「彼の傲慢な態度に思わず苦言を呈する者が続々と現れた。」
4.「彼女の経験のためにも、私が苦言を呈するのではなく一歩離れて見守ってみよう。」
5.「何度苦言を呈しても、あの人は考えを改める気はないようだ。」
このように、ビジネス上でよく使われる「苦言を呈する」という言葉も、話すトピックによってさまざまなシーンによって使うことができます。
「苦言を呈する」の言い換え
敬語での「苦言を呈する」という表現はご紹介しましたが、「苦言」という言葉に抵抗のある場合は下記のような類義語を使ってみてはいかがでしょうか。
「苦言を呈する」の類義語
耳の痛いことを言う
「耳の痛い事」と「苦言」が同じ意味を持っています。「苦言」というあからさまに辛そうな日本語表現よりは幾分ソフトなニュアンスで使える言葉ですよね。
戒める
「戒める」には先ほどの「進言する」「諫言する」とは逆で、上司が部下に対して使う場合に用いる言葉として主に使います。「失敗しないための予防線を張る目的で、注意を促す」というニュアンスが強い言葉です。
以上のように、伝える相手によっていろいろな言い回しができるので、「苦言を呈する」という表現とともに覚えておきましょう。
「苦言を呈する」は直接使う場合にちょっと勇気がいるかもしれないので、「進言する」「耳の痛い事を言う」などの言い換えの言葉に置き換えて、伝えるべきことはしっかり伝えるようにしましょう。
「苦言を呈する」の英語表現
では最後に、日本語だけではなく英語での「苦言を呈する」の表現もご紹介します。
これから海外向けの取引がある場合、状況に応じて是非使ってみてくださいね。
exhort
「exhort」には元々「熱心に物事を勧める・伝える」という意味があり、この動詞をビジネス上で使うことによって「苦言を呈する」と似たようなニュアンスで使うことができます。
相手の意見に反した自分の意見を述べる時に使うと良いでしょう。
give somebody candid advice
「somoebody」の部分を伝えたい相手に置き換えて使いましょう。この慣用句の中に使われている「candid」という単語は、「素直な」「率直な」という意味です。つまり、全体としての意味は「相手に率直な意見を伝える」ということになり、相手に嫌な思いをさせることになってしまったとしても言うべきことを言う、というニュアンスが含まれます。
言いたい事や言うべきことをきちんと伝えられるように
誰に対して伝える言葉であっても、相手の気分を害する意見は避けたくなりますよね。
しかし「苦言を呈する」場合は、物事をより良くするために意見を述べる際に使う言葉です。ビジネス用語をしっかり知っていれば、相手も結局は「自分のためを思って言ってくれていること」というのを理解して受け入れてくれ、意見交換も発展的に進むでしょう。
一時的な感情よりも、物事がよりよく進むための働きかけを躊躇なくできればビジネススキルもより高くなりますね。
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